★Kenro Songs/旅と料理と音楽と

前期高齢者となった元・正社員サラリーマン(現在はパートタイム契約社員)は、旅と料理と好きな音楽の話と、オリジナル曲の制作で余生を過ごすのです。

【訃報】歌手のヘレン・レディさんが9月29日に亡くなられました。

 H-から始まる名前のアーティストですが、訃報が入って来たので割り込みします。音楽系ブログで、たぶん誰も取り上げてくれないと思うので、私が書きますね。

 私にとっては、Bette Midlerおばさん、Diana Ross と同じくらい大好きな歌手。愛したアーティストに亡くなられると、ショックが大きいですね・・・。

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これは1975年のアルバム”No Way to Treat a Lady” ほれぼれするような美しさです。

 私は彼女のレコードはLP7枚、昔LAで買ったベスト盤CDを1枚持っています。

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どれも擦り切れそうになるくらい、聴きこみました。

 彼女はオーストラリア出身。20代の時にシングルマザーでアメリカに渡り、ブロードウェイのミュージカル曲がヒットして頭角を現しました。やがて"I Am Woman"が全米NO.1となり、一躍「時の人」になりました。

 マスコミはこんな時、最も分かりやすい特徴をとらえ、レッテルを貼ってその人を紹介します。まるでそれ以外何もないみたいに見えますが、もちろんそんなことはありません。

www.udiscovermusic.jp

 詳しい経歴は報道に譲りますが、彼女は1966年から2002年までの間にオリジナルアルバムを16枚発表し、シングル曲でBillboard NO.1が3曲、TOP40に15曲を送り込んでいます。

 決してI Am Womanだけの人ではなく、ウーマン・リブ(死語)の象徴でしかなかったわけでもありません。

 

 どのアルバムも、スタンダード・ナンバーから新進気鋭の作曲家までバラエティに富んだ幅広い選曲で、シングルカットされなかった曲もとてもクオリティが高く、捨て曲がありません。(ドン・マクリーンの"And I Love You So"もカバーしています)

 歌唱そのものはそれほど上手い人ではありませんでしたが、ネアカなカラッとした感触でありながらも深い愛情をたっぷり込めるスタイルで、聴く人の心を温め励ましてくれるような、とても心地のいい歌を聞かせてくれるボーカリストでした。

 一定の名声を得た後は、その美貌とキャラクターの明るさから、TV番組のMCとしても活躍し、一時期は「アメリカ人の国民的恋人・理想の良妻賢母(若奥さん)」的なポジションも手にしていたようです。

 2015年からは認知症で老人ホームに入所していたそうですし、2度の離婚・3度の結婚と私生活も波乱万丈だったようですが、子宝には恵まれ、愛情にあふれた晩年だったようです。

 ご冥福をお祈りします。

 

おすすめの曲

Long Hard Climb

 1973年の同名アルバムからのタイトル曲。カントリーのシンガーソングライター:ロン・デイビス作。マリア・マルダーも歌っていました。邦題「長い辛いのぼり道」。

You and Me Against The World

 74年のアルバム"Love Song For Jeffry"から、ポール・ウィリアムスの作曲。母子家庭の母だった彼女がJeffryという新しい伴侶を得て更にJohdanという息子を授かり、家庭を守りながら生きてゆく決意を歌っているようです。

 エンディングで息子のジョーダン君との会話が挿入され、屈託のない愛にあふれた可愛らしい様子が想像できます。(discovermusicのニュースでは声は娘のトレイシーとなっていますが、アルバムに映っている赤ん坊はジョーダン君です)

Sterra By Starlight(星影のステラ)

 同じく"Love Song For Jeffry"から。JAZZのスタンダード・ナンバーの一曲。彼女の母の名もステラでした。暗く深みのあるアレンジです。

Angie Baby

 74年のアルバム"Free And Easy"から、彼女の3曲目の全米NO.1ヒット。アラン・オデイの曲。ブルーな雰囲気の中で友達を励まそうとする表現が素敵です。

Bluebird

 75年、アルバム”No Way to Treat a Lady”から、レオン・ラッセルの曲。レオン本人も新婚の奥さん(Marieさん)とデュエットしてヒットしましたが、癖のない明るさ・伸びやかな声、ハッピーな雰囲気はこちらが少し上かな。

Ten To Eight

 アルバム”No Way to Treat a Lady”の中の1曲。朝8時10分前、これから仕事に出かけようとするサラリーウーマンを、そっと見つめて陰で応援する曲。

Gladiola

 76年のアルバム"Music Music"の中の1曲。田舎町から都会へ出ようとする男が、田舎に残してゆく彼女に語り掛ける曲。ヘレンの歌と哀愁を帯びた管楽器のアレンジが心にしみます。

 

 YouTubeでは、70年代の最も輝いていた時代とともに、すっかり年老いて太った老婆になった彼女の、2013年や2015年のLIVE映像も見ることができます。若い頃からのファンにはちょっと残酷ですが、でも声が全然変わっていない! 相変わらずハリのある、元気な暖かい声なんです。

 「あーやっぱりヘレンおばさん凄い!」

そんな風に思いながら、涙がこみ上げてしまいます。

 

 私は当分、「ヘレン・レディ追悼週間」を過ごす予定です。

 

ではまた。