ボズ・スキャッグス「ロウダウン」/「シルクディグリーズ」(Album)
B-で始まる名前のアーティスト。今更ですが(そればっかりですが)やっぱりBoz Scaは入れておこうかな。
このアルバム”Silk Degrees”は1976年に彼の6枚目のアルバムとして発表され、世界で500万枚以上を売上げました。
シングルのLowdown(ロウダウン)は全米3位のヒットを記録しました。エンディング曲の We Are All Alone(二人だけ)は、シングルカットはされませんでしたが、今やPOPS界だけでなく、JAZZボーカルの世界でもスタンダードナンバーになっています。
メロディも歌も演奏もアレンジも、本当にパーフェクトにいい曲です。ちなみにロウダウンとは「最低な状況」みたいな意味です。こんなにワクワクするサウンドなのに、やっぱり彼は、根はブルース・シンガーなんですね~。
そしてこのアルバムは、当時のサンフランシスコの腕利きスタジオミュージシャンを集めて録音されました。
全体のアレンジとキーボードにはデビッド・ペイチ、ドラムスにジェフ・ポーカロ、ベースにデビッド・ハンゲイトが参加。そう、後に”TOTO”を結成するメンバー3人が参加しているのです。その結果、とにかくアレンジも個々の楽器のプレイも、ジャストでタイトでしかもグルーブがある。最高の演奏です。
しかし私は以前、アマチュアバンドでLowdownをコピーし演奏して、みじめな目にあったことがあります。本物はとても耳当たりのよいメロウなサウンドで、ちょっと聴くと簡単そうに思えますが、舐めてかかるととんでもないことになるのです。
この曲は、全員が高度なテクニックを持ち、ジャストでタイトな演奏ができないと、とても「イモ(芋)」になってしまうんですね。そんじょそこらのアマチュアには(おそらくプロでも)実力の裏付けがなければ、そう簡単にコピー/カバーして演奏できる曲ではありません。
何故かと言うと、楽器編成やアレンジにポイントがあります。良く聴いてみるとドラムがツインになっていて、ステレオの左右に分かれて一方が16ビートを細かく刻んでいるとき片方がシャッフルを刻んでいますし、イントロのメロディにはフルートの音が入っていたり、ソウルフルな声の女性を2名含めたバックコーラス(クレジットでは男性を含め4声)が入っていたりします。
これ見よがしなMIXではないので聴き落としてしまいがちですが、実はサウンドの分厚さがハンパではないのです。
それは演奏だけではなく、Bozの歌もそうです。最初は優しく始まりますが、だんだんと盛り上がるにつれメロディラインの起伏が激しくなり、英語の発音も独特の歌詞の端折りがあり、結果、低音から高音までゆとりを持って歌える高度な表現力が無いと、到底こなせる曲ではありません。(やはり「イモ」になります)
少なくとも、その辺の不足をどう補うのか、そのバンドなりのアレンジ=処理方法を決めておかないと、曲を最後までやり切ることすらできなくなってしまうのです。なんとか完奏できたとしても、結局支離滅裂なマイナーコピーにしかならず、敗北感に苛まれることになります(なりました)。
この曲の素敵なイメージを堪能したければ、お金を払って本物の「粋な」演奏を聴くしかない、本当のプロが真剣に演奏するすごい曲。それがLowdownです。
ご存じない方、日本人アーティストやアイドルJ~POP、コンピュータサウンドのRAPやHIP-HOPしか聞いたことのない「音楽好き」の方、ぜひ一度聴いてみて、価値を理解してほしいなあ。
ではまた。