★Kenro Songs/旅と料理と音楽と

前期高齢者となった元・正社員サラリーマン(現在はパートタイム契約社員)は、旅と料理と好きな音楽の話と、オリジナル曲の制作で余生を過ごすのです。

藤山直美さんの舞台を見てきました

 今回はひさびさにエンタテインメント:観劇の話です。若い方にはちょっと分からないかな。

 7月26日、妻が以前からチケットを取ってくれていた、松竹の演劇「笑う門には福来たる〜女興行師 吉本せい〜」を、東京の新橋演舞場で見てきました。

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  この舞台は以前NHKの朝の連続TV小説「わろてんか」でも題材となった、吉本興業の創業者・吉本せいさんの一代記をお芝居にしたものです。

 主演は藤山直美さん。かつて一世を風靡した松竹新喜劇の大看板、藤山寛美さん(来年で没後30年になるそうです)の娘さんが、よりによって後発のライバルの女社長を演じるなんて・・・と思いますが、でも昔は森光子さんなんかがやっていたらしいし、他にやれそうな女優さんって、今、見当たらないですよね。

 ライバルと言っても別に喧嘩しているわけでもなく、関係は良好みたいですし、いいですね。

 

 「夜の部」に行ったので、劇全体は午後4時からスタート。途中休憩を2回挟んで夜8時5分終了。長丁場でしたね。これを一日2回やるんですから、俳優さんって大変ですね! 舞台に出ている実働は6時間以下かもしれないけれど、メイクしたり衣装を着替えたり、出番のタイミングを計っていたりする時間を含めれば、一日の労働時間は軽く10時間を超えるのじゃないですかね。そしてひとたび舞台に出れば、背筋を伸ばして大きな声を出して、全身で演技しなければならない・・・。体も心も健康な人でないと、到底持ちませんね。

 そういう体力も能力の内だと思うし、それを延ばして培ってこれたことも才能の一片なのでしょう。やっぱり皆さんそれぞれ天賦のものがあるのだな。

 

 見に行ったのがこんな時期ですから、何か旬の話題でアドリブのギャグでもあるかな?と思いましたが、そこは品のよい舞台と客層で、特に大きなイジリはありませんでした。

 途中、寄席の呼び込みが「吉本は裏切りません」と言うセリフがあって、一瞬客席がどよめきましたが、「なんで笑いますの?」と返す程度で、品のよい対応でした。

 

 ちょっと驚いたのは、田村亮さん(吉本芸人のほうではありませんよ)の、73歳とは思えない若さ! 林与一さん(77歳)と、わずか4歳違いとは思えませんでした。もちろん役作りもあったのでしょうが、はつらつという言葉を使っても良いくらいに見えました。2歳上のお兄さん(正和さん)が現在ほとんど引退状態なのと大違いですね。まだ60代かなと思いました。

 

 舞台装置や音楽の充実度は素晴らしい。新興・アングラ系・小劇場系などのチープな大道具とは大違いです。久々の回り舞台も新鮮だったし、花道と正面舞台とのやりとりや、せり上がり・下がりも楽しめました。

 

 劇全体は3部構成で、合計195分。正直長かったです。演出も今一歩だったかな。特に第1部は、登場人物が高齢者中心だったこともあったのかもしれませんが、いかにも話の筋(台本)を忠実に追っている感があって、少し退屈でした。

 中盤から直美さんも動き出して、時折滑稽な動きやギャグも出るようになり、更にはミヤコ蝶々さんの弟子だった女性漫才コンビ(初めて見ました)まで幕間に出てきて漫才を披露するなど、話が進むうちにどんどん面白くなってきたという印象です。

 今回の劇はあくまで演劇であって新喜劇ではなかったわけですが、題材からして喜劇寄りになることは間違いないのですから、もっと初めからスピードを出しても良かったのではないかな。もっとも新橋演舞場という格調高い場所では無理だったのでしょうか。

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 重鎮の皆さんに混じって、吉本新喜劇から、西川きよし師匠の息子・西川忠志さん、「新幹線顔」で有名な(はずの)伊賀健二さんが参加して、いい感じに溶け込んでいました。伊賀さんの新幹線ギャグは、新橋演舞場の客層にはまったく伝わらず滑りまくって・・・いや、ギャグをやっていたことすら分からなかったんじゃないかと思うくらいで、ちょっと可哀想だったですが。

 でも西川君! 芝居が旨くなった。せいの息子という重要な役を良くこなしていらっしゃいました。まだ一本調子なところはあるけど、それが「一本気な若者」という感じを表していて、かえって良かったかもしれない。母親を心底愛している感じが良く出てました。

  そして後半、「さすが藤山直美!」と思う場面がいくつもありました。爆笑派だった寛美さんと違って「本当に抜けているアホ」になり切れない分、人情劇がうまいんですよね。長く体調を崩されていましたが、これから、おそらく今まで以上に歴史に名を遺す名優になられるんじゃないでしょうか。

 勝手ながら、樹木希林さん亡き後、おばあさん俳優の最高峰を目指していただきたいものです。

 

ではまた。