キャロル・キング「イッツ・トゥー・レイト」 Album「タペストリー」
こんにちは。C-から始まる名前のアーティストのご紹介として、やはり避けて通れないのはキャロル・キング姉さんです。以前ご紹介したベットミドラー“おばさん”より2歳年上、現在78歳なんですが、イメージはやっぱり“姉さん”ですね。
アーティストとして一番売れた時期が20~30代だったし、その当時、大学生を中心とした若者の気持ちを代弁していた作風が、強烈な印象として残っています。
彼女は16歳の時、アイドル歌手としてデビューしています。高校時代の友達にポール・サイモンがいたとか、ボーイフレンドがニール・セダカだったというからすごい。彼のヒット曲の一つ「オー・キャロル」は、彼女のことを歌ったものだそうですから、驚きですね。
アイドルとしては大したヒット曲がだせなかった彼女は、その後恋人のジェリー・ゴフィンと17歳で結婚、コンビでの職業作曲家に転身しています。
有名な曲としては、黒人コーラスグループ”シレルズ”が歌って全米No.1になった「ウィル・ユー・ラブ・ミー・トゥモロー」や、リトル・エバの「ロコモーション」等々、多作でした。
当時のアメリカンヒットチャートがビートルズを始めとするイギリス人アーチストの曲で席巻されていた頃、モンキーズその他多くのアメリカ人グループや歌手にたくさんの曲を提供し、アメリカレコード業界の一員として、イギリス勢と真正面から戦っていたのも彼女だったんですね。ビートルズがカバーした曲もあったとか。
その後ビートルズは解散し、アメリカを中心に世界的に起こった若者とロックミュージックによる社会変革や共同体幻想(ヒッピー文化、フラワーパワー、ラブ&ピース等)が行き詰まり、社会に対する憤りや悩みを抱える若者達が、無力感・虚無感に苛まれ、周囲の人々や自分の生活を見つめ直す時代になりました。
その頃キャロルもまた、職業作家としての活動から、一人の女性アーチストとして立ち位置を変化させるに至り、28歳でソロアーティストとして“Liter”で再デビュー、29歳で発表したのがこのセカンド・アルバム“Tapestry”でした。
このアルバムに収められているのは、社会に対して批判や不満をぶつけるのではなく、自分や周囲の人を見つめ直し、穏やかな生活に目を向けた「私小説」的な歌詞であり、独り言を言うように流れる、自己肯定感に満ちた情感溢れるメロディです。
そしてそれらは、シンプルで落ち着いたアレンジによってまとめられ、刺激を抑えた滋養分のように、ささくれ立った若者たちの心を癒す、とても高品質のヒーリングミュージックだったのです。
主な聴きものの曲としては、
M2 So Far Away
自分の目の前を見ながら遥か遠いかなたを想像している主人公の姿が、映画の一場面のように見えるような曲です。
ちなみにこの曲は、ジャズ・フュージョン界の大物グループ"クルセイダーズ”が、インスト曲として大胆にアレンジしカバーしています。彼らはライブアルバム”Scrach"の中で、クライマックスの曲として情感たっぷりに演奏しています。
M3 It's Too Late
言わずと知れた全米NO.1。R&B調のリズムとアレンジがなんとも言えない良い味を出しています。
M7 You've Got A Friend
バックにはAギターでジェームス・テイラーが参加しています。
M9 Will You Love Me Tomorrow
セルフ・カバー。ジェームス・テイラーのコーラスがいい味わいです。
M12 Natural Woman
これも、アレサ・フランクリンが歌ってヒットした曲のセルフカバーです。
シカゴの創設メンバーであるロバート・ラムは、以前からキャロル・キングをリスペクトしていました。昨年のAMAで“この10年賞”をキャロルから手渡されたテイラー・スイフトも、彼女を讃える発言をしています。
世界中に“ビートルズ・フォロアー”と言われるバンドがたくさんいることが言われていますが、実は“キャロル・キング・フォロアー”であるソングライターも、おそらく同じくらいかそれ以上いるはずだと、私は思っています。
他にお勧めしたいキャロル・キングのアルバム
1971年 Music 全米1位
(カーペンターズがカバーした「小さな愛の願い」全米12位、スイートシーズンズ:全米2位 含む)
1974年 Wrap Around Joy 全米1位
シングル「ジャズマン」は全米2位、「ナイティンゲール」は全米9位
2001年 Love Makes The World
往年と変わらぬキャロル・キング・ミュージックを聴くことができます。
ではまた。