ドクター・バザーズ・オリジナル・サヴァンナ・バンド「シェシェ・ラ・ファム/セ・シ・ボン」/Album「ファースト・アルバム」
D-から始まるアーティストはビッグタレントばかりですが、たまには変わったところもお勧めしましょう。これは1976年に発売された、彼らのデビューアルバムです。
デビューシングルの”I'll Play the Fool”は全米チャート80位に終わりましたが、2曲目の”Cherchez La Femme”(邦題:あの娘を探せ)は27位、アルバムも最高22位、後にゴールドディスクになっています。
メンバーについて
このバンドは1949年生まれのストーニーJrと1歳年下のトーマスのブラウダー兄弟(異母兄弟)を中心に、1974年にニューヨークのブロンクスで5人編成で結成されています。
兄が作曲/ギター/ピアノ、弟が作詞/ベースを分担していますが、その他はVibeとドラム、パーカッションという構成。看板ボーカリストはふわっとした歌い方が魅力のコリン・デイ嬢です。
そしてバックのオーケストラ・アレンジは、フォー・シーズンズの前身であるフォー・ラヴァーズでベーシスト兼アレンジャーだったチャーリー・カレロが、ストーニーと共に担当。
ジャケットのイラストで、鶏のお面をかぶって指揮棒を振っているのはストーニーと言う説もありますが、私はチャーリーではないかと思っています。
ストーニーはイラストでちゃんと顔が描かれていますし、正式メンバーではないチャーリーは顔を出せない。しかしとても重要な部分を担っているので、敬意を表して姿を描いたのではないか・・・と考えますが、どうだったのでしょう。
サバンナ・バンドの音楽
彼らの音楽性はムラート・ミュージックと呼ばれ、1930~40年代のキャブ・キャロウェイあたりのビッグバンドジャズ(キャバレー、ダンスホール系のブラスバンド・ミュージック)に、カリブ海周辺のヒスパニック系の要素とディスコ・サウンドなどをミックスしたもので、全編にトロピカルで「シュガーコーテッド」な、限りない甘さをたっぷりと含んだ、ノスタルジックな「魅惑のポップス」と言えるものです。
私はビッグバンドのスイングJAZZが大好きなので、このバンドも大好きなのです。
そしてこのバンドの音楽性は、私が(勝手に)敬愛する加藤和彦氏も注目していました。
(加藤和彦さんは、フォーク・クルセダースやサディスティック・ミカ・バンドなどで活躍された、日本のPOPSの先駆者として有名な、あの方ですね)
奇しくもサバンナバンドのデビューと同じ1976年、加藤氏がソロで歌ったヒット曲「シンガプーラ」には、既に近い雰囲気を感じますし、78年、加藤氏の作曲で竹内まりやさんが歌ったデビューヒット「戻っておいで私の時間」は、アレンジがもろにパクリなのですね。この曲はサバンナ・バンドのアルバムに入っていても何ら違和感がない状態でした。
私は当時その曲を聴き「加藤和彦氏、やりやがったな」と思ったものです。(当時は敬意もへったくれもありませんでした)きっと、彼らをリスペクトしていたと思います。
お薦めの曲(捨て曲はありません)
M1 I'll Play the Fool
SAXのアドリブからJAZZ曲が始まるのかなと思うと、いきなり古き良きハリウッドのミュージカル映画のようなイントロ・・・すぐにサバンナバンドの世界観に引き込まれます。「楽しい旅路を・・・」とナレーションが入りそう。
M2 Hard Times
映画の主人公の回想シーンが始まるようなイントロ。素敵なアレンジです。名前はハードでも曲調はあくまでもまろやかです。
M3 Cherchez La Femme / C'est Si Bon
前奏が始まるだけでわくわくします。何とも言えない頼りないメロディとボーカル・・・。でもそこがいいんだなあ。後半のビブラフォンもいい感じです。
M4 Sunshower
子供たちの声のコーラスが牧歌的な雰囲気を醸し出していて、心が洗われる気がします。「アフリカの盆踊り」と言った感じのリズムがうれしい一曲。でも裏にJAZZっぽいピアノやハリウッドっぽいストリングスも流れているんです。このミクスチャー感覚! クセになります。
M5 We Got It Made / Night And Day
そして盆踊りは続く・・・「ゴキゲンな」という表現がぴったりな、楽しいリズムです。思わず体が動いてしまいます。これがシングルカットされても良かったんじゃないかな。
M6 You've Got Something / Betcha' The Love Bug Bitcha'
このリズムは・・・ドドンパじゃないか? バックのブラスバンドが、粋で小気味のいい演奏を繰り広げます。幸せな気分になれる曲。
M7 Sour & Sweet / Lemon In The Honey
「戻っておいで私の時間」のバッキングアレンジは、この曲が元になっているのではないかと思います。ちょっとディスコっぽくもあるリズムです。楽しい!
セカンドアルバム
1978年 ”Meets King Penett”
ファーストとほぼ同じ雰囲気で展開します。少しJAZZ寄りかな。こちらもお勧めです。
ちなみに
弟のトーマスは後にオーギュスト・ダーネルと名乗り、キッド・クレオール&ココナッツを結成しています。こちらはサバンナバンドとは違い、音楽性はかなりファンクよりのエネルギッシュなものになっています。
このバンドが、カールスモーキー石井さんの「米米クラブ」に大きな影響を与えたことは有名です。ジェイムス小野田さんの初期の衣装は、「鶏面の指揮者」のイメージからヒントを得ていたような気がします。
サバンナバンドのストーニー氏は2001年に死去されていますが、オーギュスト氏は現在70歳を過ぎても元気そうで、ココナッツは現在もライブを中心に精力的な活動をされているようです。
でも、やっぱりサバンナバンドとは違う音楽です。あの世界観を、どこかで誰か復活させてくれないかな。今の若いミュージシャンに、あの時代の「記憶」を求めても無理なのでしょうが。
ではまた。