★Kenro Songs/旅と料理と音楽と

前期高齢者となった元・正社員サラリーマン(現在はパートタイム契約社員)は、旅と料理と好きな音楽の話と、オリジナル曲の制作で余生を過ごすのです。

カーペンターズ「ア・ソング・フォー・ユー」(Album)

 C-から始まるフェイバリット・アーティスト。前回キャロル・キングをお勧めした関係もあり、「アメリカンポップス大好き人間」として、カーペンターズを外すわけには行きません。

 彼らはボーカルのカレンの存命中に9枚のスタジオアルバムを発表していますが、中でも最高傑作と言えば、誰が何といっても、1972年発表の”A Song For You”です。

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LPレコードでの発売は1972年。CDが発売されたのは1983年。

 このアルバムは、メロディ・アレンジ・歌唱・ハーモニーのどこを聴いても非の打ち所のない、彼らの最高傑作と言えます。発表からもうすぐ50年が立ちますが、キャロル・キングの’Tapestry’と並びPOPSの歴史に残る最重要アルバムの一つであり、POPSファンならば必ず聴いておくべき一枚でしょう。

 中には13曲が収録されていますが、なんと6曲もシングルカットされ、いずれもTOP20以上の大ヒットを記録しています。

アルバム内の聴きもの

M1 A Song For You

 これは言わずと知れたレオン・ラッセル作の名曲。シングルカットはされていませんが、ぜひしっかり味わいたい、アルバムのタイトル曲です。

 レオン本人も含め、これまで様々なアーティスト・歌手がレコーディングしていますが、アレンジも含めた曲全体の完成度は、このカーペンターズ・バージョンが最高峰ではないでしょうか。オルガンやストリングスの印象的なフレーズ、重厚なコーラスに支えられ、情感たっぷりに歌うカレンの声が耳に残ります。 

M2 Top Of The World

 過去曲のカバーかと思いきや、リチャードの作によるカントリー・タッチのオリジナル曲です。

 全米NO.1になり日本でも広く人気を定着させた曲ですが、これと後年の“Sing”の2曲で、カレンは「歌のお姉さん」イメージがついてしまった感はあります。

 デビュー2枚目のシングル “Close To You” (遥かなる影)で魅了された私としては、「年上の恋人」というイメージが崩れてしまい、あまり好きではありませんでしたが。 

M3 Hurting Each Other

 全米2位のドラマティックなカバー曲です。当時中学生で英語を習い始めた私が、「”Each Other”って『お互いに』っていう意味だったな~」と納得して聴いていました。 

M4 It’s Going To Take Sometime (小さな愛の願い)

 キャロル・キング作品のカバー、全米12位。「本家」はシンプルなアレンジの曲ですが、こちらでは生ピアノをエレピに変えて軽い印象にし、ストリングスやコーラスで厚みを加え、フルートで清涼感をプラスするというアレンジが施されています。何よりリチャードのピアニストとしての技術は、キャロルより上ですね。 

M5 Goodbye To Love (愛にさよならを)

 静かに始まるバラードなのに、途中から演奏がロックビートに変わり、間奏でディストーション・ギターがリードを取る・・・いわゆる「パワーバラード」の元祖と言っても良い曲です。リチャードの作で全米7位。 

M10 I Won’t Last A Day Without You(愛は夢の中に)

 こちらはポール・ウィリアムスの曲。彼独特のナイーブなメロディが、安らぎを感じさせてくれます。(彼のことはいずれPの時にお話しします)

 この曲だけは2年後のアルバム再発時にシングル化され、全米7位になっています。 

M12 Road Ode (明日への旅路)

 アルバムの最後を飾る曲は、リチャード作でもカバーでもなく、バックバンドのメンバーが書いた曲とのこと。コンサートツアーの苦しさを吐露する内容ですが、とても哀愁を帯びた、彼らなりのブルースを表現している佳曲です。

 間奏のホルンやクラリネットなどのホーンアレンジも絶妙で、エレキ楽器との混ぜ具合も心地よく、アーティストのオンステージとバックステージの、それぞれの情景が見えるような深い味わいです。

 

  この後はM13として、”A Song For You”のリプライズが1分ほどあり、アルバムは余韻を残しながら終了。いわゆるトータルアルバム的な作りです。

 なかなかCD以降~ストリーミングの時代には表現できない、「音」にならない「空気」の部分まで味わうことのできる、これは本当にいいアルバムです。

カーペンターズとは

 カーペンターズ(中学英語で訳せば「大工さん達」)は兄妹デュオのグループで、兄のリチャードが作曲とアレンジ、ピアノとコーラスを担当。妹のカレンがリード・ボーカル、ドラムス、コーラスを担当していました。

 その魅力は何といってもカレンの、神から与えられた類まれなる声質を活かした、情感たっぷりのボーカルです。しかしカーペンターズの音楽の本当の中身は、兄リチャードの、クラシック音楽の知識と経験を元に、重厚なコーラス・ハーモニーやロック的なアプローチを随所に盛り込んだ、絶妙のアレンジ/プロデュースにあります。

 

 兄リチャードは1946年( 昭和21年)生まれの現在74歳。妹カレンは1950年( 昭和25年)生まれ。生きていれば70歳。日本で言う「団塊の世代」を上下で挟んだ年齢で、まだ現役でバリバリやっていてもおかしくありません。

そのカレンが83年に突然亡くなってしまったのは、当時大きな衝撃でした。今でも本当に残念でなりませんね。

 

 リチャードの才能を考えれば、その後も他のアーチストのアレンジやプロデュースを手掛けていておかしくないと思うのですが、カレンの死がよほどショックだったのか、以後もカーペンターズ名義の活動は続けておられますが、別のベテラン歌手に対して曲を提供したとか、新人歌手のアレンジやプロデュースをしたという話は聞きません。

 彼にとっては、カレンの死後、彼女に匹敵するような、自分の才能を触発されるような素材としての歌手に出会うことはなかったのでしょう。

  確かに現在まで、カーペンターズを超えるPOPユニットは現れていないと思います。でもカーペンターズの音楽のファンとしては、できるなら(その能力は十二分にあるのだから)リチャードさんには「第二のカーペンターズ」を作ってほしかったな・・・。

 

ではまた。