★Kenro Songs/旅と料理と音楽と

前期高齢者となった元・正社員サラリーマン(現在はパートタイム契約社員)は、旅と料理と好きな音楽の話と、オリジナル曲の制作で余生を過ごすのです。

Rockin’ Onとレコードコレクターズ(世界のPOPSシーンと日本のROCKジャーナリズムの明暗)

 久々に「ああ、これこれ!こういう記事を待ってた」と思ったのが、現在発売中の ”Rockin' On” 3月号です。

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 一番ショックを受けたのが、特集記事のトビラで編集長の山崎氏が書かれた「00年代からロックはヒップホップ/エレクトロミュージックによって完全に相対化されてしまった」というコメント。「ついに書かれてしまったか・・・」と感じましたね。

 ここからは私の意見ですが、「相対化された」とは、つまりロックはPOPミュージックの1カテゴリーに過ぎなくなってしまったということ。そのことをロック専門誌だった "Rockin' On" が書いたこと自体、画期的なことだし、英断が必要だったのではと思います。

 昔、60年代~80年代くらいまでは、ロックと言えば若者の音楽のすべてと言っても過言ではありませんでした。ところが今日のヒップホップ隆盛のシーンを見ればわかるとおり、今どきの言葉で言えば、ロックはもはや「オワコン」であるということ。

 私のような、60年代の終わりから洋楽を聴き続けてきた世代にとって、正直、読みたくなかったけれども読みたかった文面。自分でもうすうす感じていて、いづれ誰かに宣告してほしかった言葉だった気がしてます。

 

 私はもともとロックファンではなく、あくまでもPOPSのファンなのだけれど、音楽の要素としてロックのメソッドを取り入れてヒットした曲は山のようにあるし、そんな曲を愛聴してきたことも事実。でもここ数年、ヒップホップの全盛で、メロディもアレンジも薄い曲ばかりになり、つまらない曲ばかりの時代になってしまったと感じます。

 ロックの持っていた要素の中でとても良かったのは、ルーツミュージックに根ざしていたこと(甘じょっぱい味付けの底に魚介出汁のうまみがある感じ)、ダイナミックレンジの広いアレンジが取り入れられていたこと、それぞれのアナログな楽器ごとに、超絶技巧の職人プレイヤーがいたこと、数人のバンド形式による楽器編成の薄さを補うため、しっかりしたコーラス/ハーモニーがあったことだと思う。それがヒップホップやエレクトロのおかげで衰退してしまったことに、とても寂しさを感じます。

 

 最近ようやく、テイラー・スイフトエド・シーランやポスト・マローンなどのおかげで、POPSにメロディーが戻って来た。光明が差してきた気がします。ソロ歌手が全盛で、バッキングはコンピュータだしハーモニーもまだ復活しているとは言えないけれど、この際、この記事のおかげで、そんなシーンの実態を現実と肯定し受け入れ、前を向くことができるような気がしてきました。

 特集記事の中では、この10年間の重要なアーチストたちの最重要アルバムを紹介していますが、どれも肯定的で、すべてのアルバムを聴いてみたい衝動に駆られます。POPSの未来はまだまだ明るいと思える、いい特集です。

 

 一方、レコードコレクターズのほうはと言えば、今回はこんな特集です。f:id:kenro1601b1:20200222170927j:plain

 私は90年から、好きなアーチストの特集のたびに同誌を購入して愛読して来ました。今回で51冊目になりますが、さすがにここ数年の同誌の衰退はひどいと思う。

 1月号の特集がビートルズ、2月号がクイーン、そして今回がこれ。さすがに厳しいな。「70年代のベストアルバム100」なんて、2007年の6月号でやってたし。サブの特集も、クリームだのマイルスだのYMOだの・・・ご老人ばかりにスポットを当てています。

 以前は、何枚かアルバムが出て何曲かヒットが出て人気が定着してきた段階で、現役のアーティストを特集してくれていましたから、こちらはその情報をもとに、知らなかった・食わず嫌いだったアーティストの評判の良いアルバムを入手して再評価し、自分の音楽のコレクションを広げることに役立ててきました。

 しかし時々はこういう温故知新もいいけれど、最近全くと言っていいほど現代の(現役の)アーチストの特集をやってくれません。 

 

 もはやこの雑誌は、読者(レコードコレクター)のための、アーチストやアルバムを紹介する機能を果たしていないと思う。なぜなら、これを読む読者たちはおそらく50代後半~70代の人々で、紹介されたレコード(CD)はほとんどが既に所有しているはずだから。新規のコレクションの購入に結びつくとは、到底思えません

 

 1月号のビートルズ特集は、さすがに買う気になれず立ち読みしかしませんでした。彼らのフォロワーであるアーチストをたくさん取り上げていましたが、しかしそれらのバンドもほとんどが既に解散し、引退し、一部のメンバーは既に鬼籍に入り、かろうじて活動しているとしてもシーンからは遠く離れています。

 確かにビートルズは偉大だったと思いますが、しかし今更50年前のバンドを深く掘り下げても手垢の後を発見するだけなのではないでしょうか。仮に新しい情報があったとしても、今更50年前のバンドの新情報が、何の役に立つのでしょう。

 これはまるで、「風の谷のナウシカ」の原作漫画に出てきた、千年前の科学技術を伝承するためだけに存在する「シュワの墓所」の僧侶たちにそっくりです。

 

 もっと取り上げてほしいアーティストはたくさん居たのに。ロックももはや死語なら、レコードもレコードコレクターもいずれ死に絶える。その運命に逆らって意地を通し続けることは、本当のロックスピリットなのでしょうか。

 

 そんなことを感じた、2誌の特集でした。

 

ではまた