アル・スチュアート「イヤー・オブ・ザ・キャット」
A-から始まるアーティストのご紹介。その②はAl Stewart。代表作と言えば、彼が1976年にヒットさせた、この曲と同名のアルバムです。
プロデュースはアラン・パーソンズ、ジャケット・デザインはヒプノシスとのこと。当時、この中に猫が何匹描かれているのかが、ちょっとした話題になりました。(10匹以上いますよ)
シングルは全米8位、アルバムは5位の大ヒットです。
Al Stewartは1945年(昭和20年)イギリスのスコットランド生まれ。でもこの曲もアルバム全体も、とてもアメリカン・テイストの、今でいうAOR路線のサウンドです。
曲の歌詞は「猫年」を舞台にしたファンタジックなもの。アジア圏の干支をモチーフにしたようです。(チベットやベトナム、タイなどでは「兎年」の代わりに「猫年」があるそうです)
6分40秒もある長尺の曲ですが、少しも退屈さを感じません。
美しいピアノからイントロが始まり、リズム隊がスタートすると、彼本来のフォーク的な、比較的平坦な淡いメロディが淡々と展開しますが、途中しっかりピアノのオブリガードがメロディをサポートし、要所要所でスナップ写真を撮るように、印象的なドラムのフィルが入って、次第に曲が盛り上がって行きます。
そして間奏に入ると曲調が一変します。実はここが一番の聴きどころ。
流麗なストリングスから、まるで夜の繁華街のネオンサインの瞬きのような、きらめくアコースティック・ギターのソロ~そんな都会に潜む狂気を表現したようなエレキギターの咆哮~そして情感たっぷりのサックスへと、さまざまな楽器をふんだんにちりばめたアレンジで演奏が続いて行きます。(この間、1分20秒くらい)
再びボーカルに戻り、歌い終わった後は、まるで映画のようなエンディングです。
もう一度、終焉を告げるようなストリングスと、”終わり”のチャイムのようなエレキのフレーズ、別れを惜しむ鳴きのサックス・・・(ここでまた1分30秒ほど)。ゆっくりとしたファイド・アウト。
最後は、主人公が車の窓から、寂しげな表情で町が遠ざかってゆくのを見つめている・・・そんな光景が目に浮かんで来そうです。
少しも曲が長いと感じませんし、むしろ少しでも長くこの時間に浸り続けていたい・・・。そんな気さえしてくる、珠玉のアレンジだと思います。1曲リピート必至ですね。
ではまた。