Chicago Chrismas (Chicago 37) ◆アルバム・レコメンド◆
去る11月4日、Chicagoは3枚目のクリスマス・アルバムを発売しました。(通算では37枚目になります)
私は中学生時代からのChicagoファンなので、ご紹介させていただきます。
私は別にクリスチャンでもなく、クリスマスパーティをする習慣があるわけでもないのですが、昔からのファンとしては「買わないという選択肢はないやろ~」と、コレクションの一環として輸入盤を購入してしまいました。(日本版が発売されるアナウンスは、今のところありません)
Chicago について
1960年代、アメリカ西海岸から発祥した「New Rock」の一カテゴリーとして注目され「ブラスロックの雄」と言われた彼らも、ベトナム戦争が終わるとともに政治的主張が後退し、やがて個人生活にフォーカスしたラブソング中心のPOP路線に曲づくりを変えて行きました。
アルバムやシングル曲のヒットによる成功を重ね、メンバーチェンジも重ねながら、彼らは「産業ロック」のメインコースを歩んでいきました。
しかしその後、時代の波は変わりシーンもすっかり様変わりした結果、彼らは結成50年を超える伝説のバンドとなりましたが、すっかりヒットチャートの第一線からは遠のき、現在は初期のCBS/コロンビアレーベルを離れ、たくさんの過去の遺産的なカタログを集めるライノレーベルの所属となっています。
今更どんな主張があろうが良い新曲を出そうが、彼らが再びヒットチャートに姿を現すことは考えられませんが、それでもいまだに毎年全米ツアーを行い、年齢を感じさせない新しい音を生み出し続けてくれているのは、リアルタイムで聞きこんできた、一緒に年を取ってきたファンとしては、うれしい限りです。
アルバムについて
さてアルバムは10曲(11音源)入り。一般に知られているクリスマスのスタンダードナンバーは2曲のみ、後はメンバーのオリジナル6曲(1曲のみ2バージョン収録)+外部作家1曲+バート・バカラックの「What The World Needs Now Is Love(世界は愛を求めてる)」のカバーという構成ですが、いずれも、いかにもクリスマスの雰囲気を感じさせる曲とアレンジが施された内容になっています。
中でも手に入れて良かったなと思わせてくれたのが、2曲目の”All Over The World” これは新加入のボーカリスト:Neil Donellのペンによるもののようです。ハッピーでキャッチーな曲調で、アレンジも伸びやかな往年のスマッシュヒットのフォーマットです。
もしこれが発表されたのが1970年~80年代であれば、間違いなくBillboardやCashboxのチャートで10位~20位代くらいには入っていただろうし、毎年リバイバルされる、ワムやマライヤ・キャリーなどと同じ扱いになっていたかもしれません。(それが狙いで制作したのかもしれませんが)「信頼のブランド・Chicago印の」と言った感じの曲ですね。久々の「1曲リピート」です!
そしてこのアルバムは、アメリカの中産階級の家族で、昔は貧乏だったけれどグランパとその仲間たちが頑張ったおかげで家も村も豊かになり、素直で優秀な子供たちが更に稼業も発展させてくれて、かわいい孫たちも生まれて豊かな生活を手に入れることができた、そんな一族のクリスマスパーティの情景を歌ったような、夢のある時代のハッピーなひとこまを描写したような空気感で満たされています。
現代の、妬みがましいラッパーの若者たちからは”Shit!”と言われそうな、「リア充」と言われ揶揄されるような典型的な成功者一家の姿。それを今どきこんなに正面切って素直に肯定し、臆面もなく表現できるのは、古き良き時代の記憶を持っているアメリカの白人だけなのかもしれませんが。
でも私は子供のころから、こんな世界にあこがれを持っていました。自分では手にすることはできませんでしたが、今も「いいなあ」と思って聴いています。
大御所の役者か往年のミュージカル・スターのように、大見得を切って、“Marry X’mas,and I love you~”なんて、密かに歌ってみたくなる、ノスタルジー溢れるアルバムです。そんな気持ちに浸りたい方は、どうぞ!
ではまた。