★Kenro Songs/旅と料理と音楽と

前期高齢者となった元・正社員サラリーマン(現在はパートタイム契約社員)は、旅と料理と好きな音楽の話と、オリジナル曲の制作で余生を過ごすのです。

声優の藤田淑子さんが亡くなられました。ファンだったのでショックです・・・。

 引き続き音楽の話とちょっとズレますが、アニメ・声優グループを見ても一人も藤田さんの訃報に触れているブロガーがいませんでした。ということは、全然世代が違うのかな。YouTubeには訃報に関連した動画がいっぱいありますが、こちらは追悼と言うより広告収入狙いの方が多いようで・・・。と言うわけで、「歌手」のくくりでコメントを書かせてもらいます。藤田さんは歌がうまかった!

 

 ご本人は声優と言うより俳優さんでしたが、舞台を中心にされていたようでほとんどTVで見ることはなく(青二プロはだいたいそうですね)私にとって「幻の」あこがれの人でした。私がファンだったのはひとえに藤田さんの声が好きだったからです。

 初めてその声に触れたのは昭和43年、小学校4年生の時。東映動画のオリジナル長編漫画映画「アンデルセン物語」でした。(当時は「アニメ」なんて言いません)

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 これはアンデルセンの童話の一つではなく、作家アンデルセンの子供時代をモチーフにしたお話(史実に題材を取っているが、基本はフィクション)です。ミュージカル仕立てになっており、随所に彼が書いた作品の場面や登場人物が出て来る構成で、自然と物語を読むことに興味を持たせる仕掛けになっていました。 

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 映画は小学校の講堂で行われた映画鑑賞会で見たのですが、活発な男の子が喜びそうなカッコいい場面は全く出てきませんから、同級生の男子の大半は退屈そうにしていました。でも私はいっぺんで主人公ハンスの声に魅了されてしまいました。「なんて美しい声の人なんだろう。」それが藤田さんでした。

 アンデルセン物語の翌年、東映動画は単独の漫画映画ではなく、TVアニメ数本とカプリングした「東映まんがまつり」という形で長編アニメを継続します。その「まんがまつり」第一回が「長靴を履いた猫」。ここでも藤田さんは準主役の少年ピエールの声で出演されます。私は映画館でワクワクしながら見ていたと思います。

 ちなみに、この「長靴を履いた猫」は、脚本が井上ひさしさんであり、若き日の宮崎駿さんも作画スタッフとして参加しています。アテレコには小池朝雄さんや益田キートンさんなどもいて、子供向けではありますがしっかり作られた作品です。

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 その後、藤田さんは劇場向け作品には出なくなりましたが、代わりにTVの仕事が多くなりました。

 印象的だったのは手塚治虫さんの虫プロ制作による「どろろ」ですね。主題歌が独特で、大半はどろろがふざけて言っていると思われる歌詞なのですが(いわゆるアニメ声の元祖かも)サビの部分ではそのふざけた調子が真面目になるとともに、藤田さんの歌い方も本来の美声に戻り(エコーも多めにかけられ)、時代の運命に翻弄される侍達やどろろと百鬼丸の悲しみ苦しみが切々と歌い上げられています。

 それは本当は美しく可愛い女の子であるどろろが、戦乱の世の中を生き抜くためにガサツな男の子になりすましているが、ふとした時に本来の姿になる境遇と、藤田さんが与えられた仕事のために、本来の美声を殺して汚れた声を出していることとイメージがダブり、なんだか可哀想な気がしてジーンとしながら聴いていました。

 作曲は冨田勲。のちにアナログ・シンセサイザー勃興期の第一人者となる「世界のトミタ」です。

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 もうひとつ、藤田さんの歌で有名なのは「ムーミン」の主題歌ですね。これも虫プロですが、監督が名匠・りんたろうさん。 

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 その後は、「一休さん」や「キテレツ君」その他、精力的にお仕事をされ絶大な人気声優となります。

 考えてみると藤田さんは「アンデルセン」の当時18歳だったんですね。私の8歳上のお姉さんでした。共演者を見ると、高島忠雄、杉山佳寿子、藤村有弘、玉川良一三波伸介など、いずれも芸達者な人たちばかりです。彼らも当時は若かったと思うけど、その中に混じって18歳の藤田さんが、声だけとはいえ初主演していたのは、さぞ初々しかっただろうなと勝手に想像してしまいます。

 藤田さんの顔を拝見したのはそれから何年もたってからですが、当時私は子供心に顔も知らない美しい声のお姉さんに、初恋をしていたのかもしれません。

 NHKの朝ドラなんかで藤田さんをヒロインにして、アニメ黎明期のドラマをやってくれないかな。

 ご冥福をお祈りいたします。

 

ではまた